問わず語り

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お参りが? 仏さんの前さ行って、納経つったが。 村でもらった経ばあげんの。読める奴はやんだべけど、 (お経を読める人はお経をあげるのでしょうけれど) おれは「なまんだぶ」って何回もゆって拝むだげだな。 いろいろお祈りしたど。 村の人元気だように、みんな食えるだけなんでも採れるように、 孫元気だようにって。 村ばなんでってが? したって、やっぱし育ったどごだからな。 おれがこごさ来さされだのは、村の誰のせいだ? 誰のせいでもながんべよ。(誰のせいでもないでしょうよ) 生まれるどごは、選べねえべよ。 死にに来さされだって、お祈りはお祈りだべ。 缶だの瓶だの置いである仏さんさは、摘んだ花活けでやってな。 そうやって、人から恵んでもらったり、寝がしてもらったり、 自分で食ったりして、お参りして回ってらの。 鹿撃ちの人、肉くれだなあ。 焼いでけでよ、うめがったなあ。(焼いてくれて、おいしかったなあ) あの辺はぁ、温泉でんのよ。湯気あがってでよ、 おれだちみてぇなのしかいねから、昼でもまっ裸んなって、入ったぞ。 気持ちいがったなあ。 他のお参りさん? おらぃの村の他からも来たったよ。 どっからがは、わがんねな。 南からとが、西からとがぐれぇはゆったがな。 こったらどごさ出して寄越す貧乏な村だって、 村の名前、ゆうがね?(言うものでしょうか) 村の恥ばさらすようなもんだべ。 誰んも、聞いでこねえもんだったよ。 何しゃべったがって? んだなー。ろくた喋んねがったんでねがな。 (そうですね、ろくに話さなかったのではないでしょうか) したって、何しゃべる? 温泉気持ちいいとが、景色きれぇだとか、 あどは、どごさ宿あるとが、どごさ何生えでるとか、 そったらもんだったぞ。
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