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(女より可愛いのわかっているから俺は童貞なんだよなー)
男子の格好をした屈辱的な学ラン姿を披露していた頃は3人に告白されたけどみんな俺より可愛くなかったので振ってしまっている。
せめてチェリーを卒業していればな……。
(遠野君は普段何してるんだろう?)
今までは気にした事もなかった絆創膏を貼ってくれた遠野君をチラッと振り返って見てみた。
「…………」
黙ってルービックキューブを完成させてはバラバラにして組み立てし直すという神技を披露していた。
あの人は学園に何しに来てるんだろう?
俺の視線に気付いたのか遠野君と目があった。
「……」
「……」
無言でルービックキューブを差し出すジェスチャーをしてくるがまず席は遠いので俺が手を伸ばしても絶対に届かない。
俺は『遠慮する』と身振り手振りで反応を返すと何事も無かった様に読書をしていた。
ルービックキューブしないのかよ!
奇行が目立つな遠野君は……。
「座れ!静かに!」
数学教師をした担任が教室に現れる。
横山グループからの虐めを知っているのかどうなのか怪しいもんだ。
事なかれ主義の保守的な男性教師だ。
クラスメートは面倒そうな顔をしながら席に引っ込んでいく。
(今日宮崎さん休みか遅刻なのかな……?)
深森である出席番号の次の宮崎さんは俺の後ろの席。
そこだけがぽっかりと空いていた。
「青山!」
担任から出席番号順の点呼が始まる。
俺はぼーっとしながら自分の番を待っていた。
「深森!」
「はい」
「宮崎!」
シーン、宮崎さんはどうやら点呼に間に合わなかった。
「宮崎は遅刻か」
担任が帳簿に書きながら呟いた瞬間にガラッと教室の引き戸が開いて宮崎さんがなに食わぬ顔で現れた。
しかも担任が立っている前側の引き戸から堂々と侵入する。
「宮崎……」
「はい?なんでしょう?」
返事しながらも担任には目を向けずに自分の席へ向かおうとする。
「…………、なんか言う事あるだろう?」
「はい?そうでしょうか?」
「……、まぁ良い。セーフにしておく」
苛立ちながら宮崎さんから目を離す担任。
宮崎さんはつまらなそうな顔をしながら俺の真横を通り自分の席に着く。
すぐになんかタップ音が聞こえる。
そうそうに堂々とスマホを使っているんだろう。
宮崎さんも我が強くて羨ましいよ。
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