プロローグ

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幼少期。 おじいちゃんとおばあちゃんからはずっと『可愛い』と言われて育った。 その時は『男で可愛いなんて嫌だけどおじいちゃんとおばあちゃんがそう言うなら自分は可愛い』のだと思った。 俺の姉弟として姉がおり、子供の頃は小さな女の子が遊ぶ玩具ばかりが家に溢れていた。 ぬいぐるみ、人形、魔法少女のステッキ。 俺は別にそれで満足していたので、特別男が好きそうな車やブーメランといった玩具は家には置いていなかった。 よく姉のおさがりとかも着せられた。 この頃は流石に女物のおさがりとはいっても男が着ていても違和感のない服だけがおさがりとして着せられていた。 小学生の頃。 すぐにおじいちゃんが亡くなり、後を追うかの様におばあちゃんも亡くなった。 どちらも最後まで俺を『可愛い』と言って可愛がってくれた。 その頃から『自分は可愛い』のだと気付かされていた。 名前は中性的、顔は姉似で可愛い感じで中性的なのを自覚していたので全く間違っていないと思った。 姉が中学生になり、俺は衝撃を受けた。 (す、凄く可愛い……) 姉の着替え姿をたまたま目撃してしまった。 その瞬間の姉のブラとパンツの下着姿を俺は一生忘れないだろう。 (お姉ちゃんは可愛い!……でも、俺ももっと可愛くなりたい!) 姉に対し、嫉妬したのだ。 おじいちゃんとおばあちゃんから褒められた可愛いさに負けられないと対抗心が燃えた。 おじいちゃんの『自分がこれだと決めたことは周りからはなんと否定されようとも絶対に継続しなさい』という教えの中で『可愛くなりたい!』と強く決心した。 それからは、インターネットで可愛くなる術として女装を知った。 男であるのに女の格好をするのは恥ずかしかった。 それでも、変わってみたくて姉からの下着やスカートを無断で借りて着衣してみた。 しかし、案外やってみると普段の自分よりも生き生きしている事に気付いた。 それがはじめての女装。 姉からはこっぴどく叱られ、ぶん殴られた。 その時、俺は姉に対して手も足も出なかった。 子供の頃の俺は恥ずかしくて大泣きした。 女装をしたことに対して恥ずかしかったわけではない。 姉の方が可愛いのに、それでいてとても強かったのだ。 可愛さでも強さでも負けたことが俺の今までの人生で1番恥ずかしかった為に極力筋肉を付けないで(筋肉付けると可愛くないと判断した為)強くなる方法を徹底的に学んだ。
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