45人が本棚に入れています
本棚に追加
毎日髪を傷めない程度に手入れをしている伸ばした髪を櫛でとかしていく。
黒髪の大和撫子に憧れを持っている。
他にも髪色を染めたりするのにも憧れているが、それは後々の楽しみにしている。
女物の下着を身に付けて、卸したてのブレザーに袖を通す。
「うん……!今日もばっちりね」
自由学園に入学して既に1年が経過して2年生が始まっていた。
誕生日も早いので既に俺は20歳を迎えて車の免許も習得していた。
とはいっても学園に車での通勤は禁止されているので、電車で通学をしているのだが。
「行ってきますか」
女装している間は少しでもおしとやかに見える様に心がける。
ついつい俺と自称しないことを心掛けながら、1人暮らしをしているアパートを飛び出す。
それからは通いなれた学園までの道のりを徒歩、電車、徒歩の順番を辿る。
平和が1番だよな!
「よぉ、男女キメーんだよ!なんで毎日女装すんだよ!」
「ひぃっ!?」
平和が崩れ去った……。
俺を毎日馬鹿にして虐めてくる横山君である。
「俺の前歩くなよ、カマ野郎!」
「い、痛いよ」
イライラした口調で尻を蹴ってくる。
それに仰け反り尻を手で撫でいるとそれも気に食わないのか撫でていた手を握ってくる。
「な、何するんですか……?」
「何するだぁ?痛め付けんだよ」
「っ……」
俺は毎日毎日暴力に耐える。
校則には男子が絶対に男子ものの制服を着る旨の表記は無いが、やっぱりそんな奴はクラスの中どころか学校中で俺1人である。
「わ……、私がなにか……君にしたんですか……」
痛みに耐えながら声を絞り出す。
その言葉に横山君が吹き出した。
「私とか君とか……、本当にお前ウケるよな!ぶっははは」
汚い唾を飛ばしながら不愉快な笑いをとばす。
ムカつく、俺の趣味を散々馬鹿にしやがって!
「……」
「あ?なんだその目!?歯向かうのかカマ野郎!?」
「わ、私はカマじゃないです……」
「説得力ねー!マジもんな女みたいな声がうざってーし、醜いんだよ」
歯向かおうと殴りかかろうとする。
でも亡くなったおばあちゃんの声がリピートされる。
『人に優しく、困った人を助けられる人間になりなさい。そうすればお前は立派な人間になれるよ』
人に優しく、多分おばあちゃんは私利私欲の暴力を許してくれない。
あんなモノ、生えてさえいなければ俺は美人なのに……。
――美少女として生まれたかった!
最初のコメントを投稿しよう!