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「ちが、違います」
「ん?」
「だから、……その、ごめんなさい」
ずっと疑惑が付きまとっていた。
こんなによくしてくれる達裄君を曰くある噂のある色眼鏡で見たくなかった。
「横山君に耳打ちされたんです」
「あー、言っちゃうか……」
困った顔で達裄君が立ち上がる。
どこ行くのかと引き留めながら俺も立ち上がった。
「嫌だなぁ……、やっぱり変に察しの良い性格って損だよなぁ。はぁ……、見て見ぬ振りするには気持ち悪くて駄目だ」
「ちょ、ちょっとどこ行くんですか!?」
「帰るさ。多分お前もドン引きする様な悪い噂聞いてるだろ?」
達裄君は俺をふるいに掛けたんだ。
横山君に吹き込まれた噂を聞かされ、疑惑を持った俺に対して見極めていたんだ。
さっき達裄君は冗談みたいに友達を厳選してるなんて言っていたが、達裄君の知り合いに会う人会う人が俺を拒まない良い人ばかりなのであながち嘘でもないのかもしれない。
――そして、俺は弾かれた。
「達裄君……」
「じゃあな歩夢、もしかしたら明日の野外キャンプとか同じ班になるかもしれんしまた明日」
いつも通りだけど達裄君は傷付いていた気がした。
これで別れたら明日以降、疎遠になる気がして――。
「待ってよ、達裄君」
「ん?」
「私ともうちょっと話をしてください!」
手を伸ばしても届かない。
だからいっそ体ごと加速して、抱きついた。
「達裄君を離さないです!」
「…………何やってんだお前?」
「あはは……」
引いた顔で突っ込まれた。
これには自分で苦笑い……。
「俺は割りとお前を気に入ってたんだけどな……、じゃあな」
「いやいや、逃げようとしないでください!」
抱きついた体から離れようとしたのでもっと強く腕に力を込めて固めた。
「何すんだよ……?」
「『果たして仲良しするだけの人間関係に意味はあるのかな……』、君が言った言葉だよね。もう少し私に歩み寄ってくれないかしら?」
「そっか……」
観念したみたいで抵抗を辞めた。
本当にこの人に関わると楽しいけど大変だ。
「多分な、お前が聞いた噂の大半が事実だよ」
「え……?」
いきなり核心を付いてきた。
だから俺もストレートに自分の尋ねたいことをぶつけた。
「達裄君って私……、俺のことを眼中にない俺様野郎……?」
「眼中にないとしたら既に見限ってるさ」
女の部分を捨て、男としてぶつかっていく。
達裄君の返答も迷いが無かった。
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