45人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうした?指痛いか?絆創膏貼ってやるよ」
「……え?」
その男はわざわざ地面に伏せている俺に合わせて体制を屈んで指に絆創膏を2枚貼ってくれた。
あまりにも慣れた手付きに僕は唖然とした。
「と、遠野君だよね?……あ、ありがとう」
「ん?俺の事知ってる?」
「同じ、クラスの」
「あぁ、同じクラスなんだ。知らなかった」
遠野達裄君はなんとも無い様に俺に対してさっぱりしていた。
ストレートな髪に俺が羨ましいくらいの彼もまた中性的な顔立ちであるが、目がちょっとだけ怖い。
クラスでもあんまり口を開かずにぼーっとしている男である。
「別に気にしないでくれ。ちょっと俺は忘れっぽいし適当に生きているだけの無害な奴だからさ。クラス連中に興味ないのさ」
「はぁ……」
羨ましい限りだ。
俺なんか周りに興味なくても、周りから興味を持たれて馬鹿にされるから……。
「えっと……名前…………、田中」
「ち、違います!深森歩夢です」
「すまん、深森か。ごめんな、もうちょい早く家から出ればお前を助けられたけど駆け寄ったら虐め終わってたな」
見て見ぬ振りをして2人が消えた瞬間に良い人ぶる様な人かとも思ったが、あまりにも淡白としている癖に安心感のある声で事実なんじゃないかと思ってきた。
「ん?お前男?」
「え?……私、男ですよ」
「…………美人だなお前」
「あ、ありがとう」
一瞬固まったが賛美の声が彼から飛び出し、嬉しくなった。
「でも私を見て引きますよね……」
「別に……。お前に似て本当は女なのに男の格好してる奴知ってるし」
「え?」
「あ、やべ……、あれは口止めされてたんだっけな……。まぁ深森とあいつは会うこともないよな、大丈夫大丈夫」
ぶつぶつと何か漏らしてはいけない秘密なのか少しあわあわし出す遠野君。
「俺は女なのに男の格好をしてる奴という単語は出していない!いいね!?」
「はい……」
目をマジにされて釘を刺された……。
とにかく頷いて納得した。
「遠野君……、あまり私と近くに居るの見られない様にしないと遠野君も虐められますよ」
「あ?」
「私嫌われ者ですから……」
「別に俺も嫌われてるから気にすんな」
「…………」
俺が美少女だったら遠野君に惚れるんですけど!?
何、なんなのこの人!?
最初のコメントを投稿しよう!