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「……お前」
「な、なんでしょう……?」
うわわっ、割りと顔が近いんですけど!?
俺は女装してても、そっちの趣味は無いんですけど!?
「なんであいつらより強いのにやり返さないんだよ」
「え……?」
「お前本気出せばあんなクソガキ2人なんか返り討ち容易いだろ」
「え?」
背中に冷たい汗が通る。
見透かされた遠野君から急にナイフでも向けられている気分になる。
「おっ、スカート中見えてる」
「み、見ないでくださいっ!」
じろじろと白いパンツを見ているだけの遠野君なのに体内で警鐘がけたたましく鳴り響いている。
怖い、のかな……?
ジロッとした目で遠野君が学校の校舎に振り返った。
「チャイム鳴るな」
「うわっ、そうだよ遠野君!?早く教室向かわないと!?」
周りには俺と遠野君以外の姿が消えていた。
皆俺達2人には目も向けなかったらしい。
「ふははっ……、お前面白い奴だな」
「そ、そうですかねっ!?」
走りながら笑っている遠野君。
ふざけている風に見えるが笑いながら走って階段を駆け登っているのに息1つ乱れない。
「んじゃあお先に」
それどころか一気に走り抜きあっという間に俺からの視界から遠野君が消えた。
なんだ、あの足の速さ……。
俺だって結構足に自信はあったんだけど……。
――クラスのミステリアス青年の遠野達裄君との出会いが俺の中で何かが変わっていくのであった。
別に彼とラブラブする展開は絶対に無いので安心して欲しい!
「ぶはっ、見ろよ横山!あいつ帰ったわけじゃないみたいだぜ」
「マジなんでこいつと今年も一緒なんだよ、キメーキメー」
取り巻き5人くらいでゲラゲラと馬鹿にしていた横山グループ。
俺がなかなか教室に現れない事でアパートに帰宅したのかどうかの賭けをしていたらしく金のやり取りでぎゃあぎゃあ騒いでいた。
「マジでうちらより可愛いのムカつくんだけど」
「見せ付けうぜー」
「Fが居るせいであたしら霞むのおこだわ」
Fとしてクラスの女子からもコソコソと陰口をされているのがわかる。
まぁ俺も俺でムカつきはするけど、女より可愛い事実は覆らないのでそういう嫉妬はむしろ歓迎である。
誇らしいとすら思う!
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