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何がなんでも帰らなければならない。 何がなんでも生きなければならない。 僕は今まで、周りと同調して生きてきた。周りが怠ければ怠けるし、周りが働き始めたら僕も働き始める。そこに自分の意思はなく、ただひとりの女の為に周りの奴らとともに汗を流す。そんな時に怠けてるやつを見ていると無性に腹が立つ。そんな風に意識の変化が出てきて、一人前の男になってきたと思ってきた今日。僕は大きな落とし穴にはまってしまった。 どれだけ自分が出たくても出られないほどの大きく深い穴。誰もが陥ることのある大きな穴。そこから出れるものは大きく成長できると言われている深い穴。真っ暗な、恐怖心を煽る穴。 そんな穴に僕ははまった。 体は闇に飲み込まれるように引きずり込まれ、もがけばもがくほど深くはまっていくように感じる。 だが、僕にできることはただただもがくことだけだった。だから僕はもがいた。全身を使い、手で体を支え、足で体を持ち上げる。時には周りの奴らを穴の底に蹴落とし、反動を使い穴から這い出ようともした。 底から聞こえる元仲間の声、悲痛な叫び声。恨めしい声。 心は痛んだ。先程まで一緒にご飯を食べ、仕事をし、一人の女の話で盛り上がった仲間だ。それを僕は絶望の底へと落とした。自分が生きるために。ほかが死のうが構わない。 約三十分間ほどたっただろう。僕の体は限界に達していた。足には力が入らず、手は痺れてきた。すぐ後ろには闇が迫っている。 だめだ。嫌だ。諦めるな。こんなところで死んでたまるか。生きる。俺は生きるぞ。
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