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王都への街道を一台の荷馬車がゆっくり移動している。
穏やかな小春日和の暖かさと石畳を転がる車輪の音が相まって、
荷馬車の老人はウトウトしながら手綱を操っている。
だが隣に座っているエッカートは、うつむき加減で微動だにしなかった。
心此処にあらずという感じだ。
聞こえてきた「お父さん」という声が頭から離れない。
小型ドラゴンの目が頭から離れない。
離れないどころか、
自分の息子の姿と重なる。
自分の息子の声と重なる。
そしてそれらを思い出すたびにドラゴンの目と不思議な声と自分の息子が結び付けられ、
一層頭から離れなくなる。
その考えを追い払うように頭を振り、自分の役割を思い出そうとする。
(ドラゴンは退治すべき相手だ。)
(ドラゴンが現れると、その土地はやせ細り農作物が取れなくなるか、天災が発生し甚大な被害が発生する。)
(巨大な地揺れで自分の息子が被害に遭うなどということは許されない)
(フリッツ…)
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