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「シキがそのルイって娘を好きなんだってのも聞いてる。物凄く入れあげてるって、だからサキは……」
「何でそう思う?」
「村の外の本命のΩ、あながち嘘じゃないんじゃないの…」
拗ねた瞳のハルは何やらえらく可愛らしい。そうかお前はルイを知らないんだな。
そういえば、ハルがこの村にやって来た時にはルイは既に村を離れ、引っ越して行った後だった。ハルはルイに会った事がないんだ。
「確かにルイは美人で魅力的だが彼女はαだ、Ωじゃないぞ。しかもとんだ暴れ馬でな、制御をするのも難しいじゃじゃ馬だ」
「え……? そうなの? だってシキもαだよね?」
「そこはもう関係ないらしいぞ、恋は盲目とはよく言ったものでな、シキは彼女の尻に敷かれたいらしい。俺はそういう点では嫁は尽くしてくれるタイプの方が好みでな、そんな時に現れたのが大人しそうなお前だった、だが育ってみればお前は誰にでも股を開くようなあばずれになっちまうし、それでも好きなのを止められなくて正直困っていた所だ」
「オレは意外と一途だよ」
「そうだな、今までの話に嘘がなければな」
騙し騙され、まるで狐と狸の化かしあいだ。
「ごめんサキ、オレ、ひとつだけまだ嘘吐いてる」
「ほう?」
ハルは裸体を晒したまま、俺ににじり寄ってきた。
「キスだけは初めてじゃない、これで2回目」
「は……黙っていればいいものを」
「もう嘘は止めようと思って、駆け引きとか、サキ相手じゃ意味がないんだもん。全部信じて疑いもしないって、それもどうかと思うけど? ついでにオレの事好きなんだったら今までだってもっと嫉妬してくれててもいいと思うんだよ」
「妬いてはいるさ、だが俺達の関係はまだそこまで進んでいない」
「オレが選んでいいんだよね? だったらオレは最初から選んでる。ずっとサキが好きだった、サキは覚えてないみたいだけど、オレのファーストキスの相手ってサキだからね」
まるで記憶にない事を言われて戸惑った。一体いつ俺とお前がキスをした? そんなの全く覚えていない。
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