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「はは、やっぱり覚えてない。もしかしたらと思ってたけど、きっちり時期まで覚えてるくせに、それだけは忘れちゃうんだからホント酷い……」
「何を……?」
「サキが14歳の春、オレは13、オレに初めてヒートが来たんだ」
甘い匂い、ハルの唇が近付いてくる。俺はこの匂いを知っている。
「初めてだったし突然の事で、どうしていいか分からなかったオレをサキが押し倒して唇を奪った。凄く強引で怖くて、オレは逃げ出してそのままヒートに突入したんだ。ヒートが終わってサキに会ったらどういう顔すればいいのかと思ってたら、サキはいつもと全然変わらなくてさ、なかった事にされたのか、って……うちの村はこんなだし、別にそれくらいの事で騒ぎ立てるような事でもないって、そう思ったけど、やっぱり悔しくて当て付けるみたいに色々嘘を吐いた。それもサキは全部スルーで、オレ、本当は凄く悲しかったんだ」
まさかの話に俺は困惑する。そんな事は覚えていない。いや……ちょっと待て、覚えてるぞ、確かにあの頃俺はハルを襲う夢を何度か見た。あれは俺が夢に見た白昼夢じゃなかったのか……?
あの頃の俺はまだ若く、自制という言葉が難しい年頃だった。そんな時に見た白昼夢に、そんな事はするものじゃないと強く心に刻んだのを覚えているが、まさかあれが現実だった……?
「今思えばサキはあの時オレのヒートに当てられたんだと思う、それにしたって全然覚えてないって酷いと思うけど」
「キスだけか……?」
「キスだけだよ、何? 何か心当たりでもあるわけ?」
なくはない、だがしかし、俺は夢の中で相当色々やらかしているはずなのだが、だったらまだ多少自制は効いていたと思っておこう。
「どうせだったらあの時に最後までやっとけば良かったって何度思ったことか」
「ハル?」
「オレも幼くて、そこまで頭が回らなかったんだよな」
にじり寄ってきたハルは俺に口付け、舌を絡める。
「触ってよ。何を躊躇ってるのか知らないけど、俺の身体の熱を沈められるのはサキだけなんだよ、オレの身体綺麗だろ? 全部お前のものだよ」
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