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「泣くほど噛んで欲しいのか? それほど俺の番になりたいか?」
「最初からっ、言ってる。ずっとサキの番になりたかった、ねぇ、サキっっ!」
俺は笑みを止められない、長年想い続けた相手は今俺の下で俺を求めて泣いている。誰にでも身体を許す尻の軽い男だと思っていたのに、そんな男が俺を、俺だけを求めて泣いている。
「あぁ、待ってろ、今、噛んでやるよ」
俺はハルの身体をぐいと逸らしてその首に口付けると、そのまま項に齧り付いた。ハルの口から悲鳴が零れる、またしても身体はびくりと震えてハルの中の俺を締め上げる。
「あっ、はぁ、んふっ……サキぃぃ」
「は、はは……ハル、噛まれて達ったか? 本当にとんだ淫乱だな」
ぐっとハルの顔が歪んだ。顔は涙でびしょ濡れに濡れているし、傍目からは見られたものではない表情をしていたが、それでも俺はハルを愛しいと思った。けれど、それは一瞬の出来事で、ハルは俺の腕から這い出ると、俺に向かって容赦のない拳を叩き込んだ。
「お前、最っ低だなっ! サキがそんな男だなんて思わなかったっ! こんな男に惚れ続けて番にされるとかホント最低っ! オレは馬鹿だっ、本当に馬鹿っ!」
「え? は……? ハル?」
「……出てけ」
指差されたのは家の外、先程まであんなに求め合っていたのに一体どういう事だ? 俺は戸惑いハルに手を伸ばすのだが、その手は無慈悲に払い落とされる。
「出てけって言ってんだ、この無神経男っっ!!」
そうして俺はハルの家から着の身着のまま叩き出された。何がどうしてそうなったのか分からない俺は、番になったばかりの最愛の人に拒絶されるという事態に遭遇して、たたひたすらに途方に暮れていた。
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