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オレの名前はハル、本当の名前はハルシオン。
ハルシオンは花の名前でいかにもな女名だし、皆が「ハル」と呼ぶのでいつしかオレはその名を使わなくなった。
「ハルシオン」と呼ばれていた頃のオレはまるで女の子のような格好で、女の子のように暮らしていた。当時のオレはそれを不思議に思っていなかったのだが、今思えばオレの母親はオレをどう育てていいのか模索していたのだと思う。
男女の性別は男、バース性はΩ、本来産むべき種ではない男のΩ、その事に母は悩んでいたのだと思う。
オレにはそれ以外にも人と違う所がある。
それはオレの色だ。オレの身体は元々色素がほぼない。肌も白ければ髪も白い、瞳だけが特徴的な赤色で、そんなオレを母以外の人間は気味悪がって近寄りもしなかった。
そんなオレに「君は綺麗だから俺達の家族にならないか?」と声をかけてきたのがオレの今の養父母だった。
亡くなったオレの本当の母親は彼等にオレを託したのだ。
後に聞いた話だが、現在オレの父を名乗る養父は実はオレの血を分けた兄であるらしい。そしてオレの母を名乗る養母はオレと同じ男性Ωだ。
ただ男性Ωとは言っても養母のその性はどうも何かの事情であまり健全には機能していないらしく、彼はあまりその事情を語ろうとはしない。そんな彼等2人に子はおらず、オレは彼等の唯一の子供となった。
今は、オレは自分の性も自分の色もあるがままに受け入れて生きている、その姿は死んだ母の望んだ姿だとオレはそう思っている。
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