嘘つきの恋

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つい先日、オレは長年片想いをしていた男に抱かれ番になった。番にしてくれ、抱いてくれと縋ったのはオレの方だが、オレは今その事に後悔の念を抱いている。 彼はストイックな男だった。あまり感情が動かない、落ち着いた男だと思っていた。 オレと彼は親戚と言っていいと思う、オレの養父母と彼の両親には血縁があり、オレは立場上彼の従兄弟になるからだ。実際にはほぼ他人で、血縁も何もありはしないのだが、彼はこんな色のオレを他の人間と区別する事もなく普通に接してくれた。 この村の人間は何故か皆、黒髪黒眼だ。オレが元々暮らしていた屋敷にはそんな者達は1人もいなかった。実際母も綺麗な金髪で、瞳の色はブラウンだったし、オレの世話をしてくれていた者達の中にもそんな色の者はいなかった。 養母はオレに『俺達の色も珍しい、外の世界ではいい思いはしない』とそう言った。 この村はオレにとっては外の世界だったのだけど、この村の村人達にとってはどうやら中の世界であるらしい。ここはそういう村なのだ、同じ色で固まって集まって生活している。 それは幼いオレにこの世界のどこかにはオレのような白い人達が暮らす村もきっとあるに違いないと思わせるには充分だった。 黒い村人達、その中で異彩を放つ白、それがオレだ。 オレが番に選んだαの名をサキという。この村の長老一族の直系で次男、跡継ぎではないけれど、この村の中では一目置かれている存在だ。 サキは初めて会った時からオレを不思議な目でみるような事はしなかった。人とは違うオレを大概の人間は、一度は怖がり恐れ、それが過ぎると今度はからかい囃し立てた。けれどサキだけは一度もそんな事をする事もなくオレの横にいてくれた。 『ハルは珍しい色をしているから、皆珍しがっているだけだ、中身は俺達と何も変わらないだろ?』 サキはそう言ってオレを引っ張りまわし、彼の兄弟や仲間の中にオレを引きずり込んでオレをこの村の一員にしてくれた。実の所それは、彼の幼馴染には赤髪の娘や金髪の男の子もいて、彼にとってはオレのこの赤眼ですら珍しくはなかったからだというのは、ずいぶんあとから聞いた話だ。 彼の幼馴染はオレがこの村に越して来た時には既に引っ越した後で、彼等の姿をオレは見た事がないのだけど、そのおかげでオレはサキに仲良くしてもらえていたのだとその時オレは初めて知った。
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