嘘つきの恋

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「あ? 契約解除? ふざけんな、俺は絶対にそんな事はしないからな」 オレが意を決してサキのもとを訪れると、サキは一刀両断でオレの決意を斬り捨てた。 「そもそも番にしてくれと言ったのはお前だろ? しかも俺は言ったはずだ、お前が俺を選ぶなら俺はお前を番にするとな。お前は俺を選んだ、お前はもう俺の唯一の番で俺だけのΩだ。俺以外のαに抱かれるのは許さない」 睨むようにサキは言う。 「それとも今更後悔したのか? もしかして他の奴とやってみたのか? 番になったらそいつが唯一絶対だ、俺以外のαとやろうとしてもできなかっただろう?」 なんでそんな事を言うのだろう? オレは誰ともやった事はないと、あれ程あれ程言ったのに! 「オレは誰ともやってない、やっぱりサキは信じてくれない」 「お前のその言動で、どうして信じる事ができると思うんだ! 言っておくが俺を振り回しているのはハル、お前の方だぞ!」 「オレはお前を振り回したりしてない! サキがオレを信じてくれないから悪いんだ!」 「俺に一体お前の何を信じろって言うんだよ! 俺を好きだと言うから有頂天になってお前を番にした俺を、家から叩き出したのはお前だよ! 挙句番契約は無効だ、解除してくれ? ふざけんなっ! 俺はお前を番にする時に言ったはずだ、番契約は一生物だとな。それでもいいと言ったのはお前だ! 俺はお前と番の解除をする気はない、もしお前がそれを嫌がっても、一生お前は俺の物だ、ざまぁみろ!!」 こんな怒鳴りあいの喧嘩を今までサキとした事はなかった。番契約というのは本来なら結婚と同じで、もっと幸せな契約であるはずなのに、なんでこんな事になっているのか分からない。 オレは拳を握って俯いた、そうでもしないと泣いてしまいそうだったからだ。 「サキはオレの事をどう思ってるんだ?」 「ずっと好きだったよ、くそっ、でもこうなってくるともう分からん。好きだと思う気持ちと、俺を振り回すなという気持ちで俺の中は滅茶苦茶だ……」 サキはサキで自身の黒髪を掻き毟るようにして、こちらを睨む。 好きだった? 本当に? オレにあんな酷い言葉を投げておきながら、サキはそんな事をオレに言うのか?
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