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「お前の世界は狭すぎる」
「そんな事言われたって……」
「まぁ、こうなったからには、俺はお前を外に出す気はないがな」
サキがすっと片手を伸ばしてオレの髪に手を伸ばすと、その髪束を一掴み唇に押し当てた。
「こんな綺麗な色の人間に俺は今まで一度として会った事がない、お前は俺だけのΩだ、他の誰にも見せやしない」
あからさまな束縛の言葉、オレは身を震わせた。
「サキは本当にオレの事が好き?」
「何度言わせる? 俺はお前以外を抱きたいと思った事は一度もない」
「もう淫乱って言わない?」
「ハルが嫌ならもう言わない」
何故かほっとして力が抜けたのか、またぼろぼろ涙が零れてきた。
「な……お前はなんでまた泣く?!」
「だって、だって……オレだってよく分からないよ!!」
「そんなに嫌だったのか? そこまで他意のある言葉じゃなかったんだがな……ハルの姿があんまりエロ過ぎて思わず出ただけの言葉だったのに……」
本当にこれは何でなんだろう? だけど、どうしてもオレはその言葉が嫌で嫌で仕方がなかったんだ。
「昔、まだ全然小さかった頃だよ『この淫乱のΩが』ってそう言われて母さまが犯されてるのを見てたんだ、自分も同じΩだって、あの時はもうそれが分かってて、あんなの暴力以外の何物でもなくて、それが本当にすごく嫌だったんだ……」
「母さまって……?」
「オレを生んだ人」
「いや、それは分かるんだが……」とサキはまた戸惑ったような表情を浮かべる。
「ハルの母親は父親にそんな事をされていたのか?」
「ううん、違う、アレは父さまじゃなかった」
「それじゃあ一体誰が……?」
思い出したくない記憶、怖くて怖くて隠れたまま、小さくなって震えていた。身体の弱かった母親の蒼白くなった顔を今でもはっきり覚えている。抵抗らしい抵抗もできずにやられるがまま彼女は男に犯されていた。その時の恐怖がオレの背中を這い登る、あの男は全て事が終わった後、こちらを向いて嗤ったんだ。
その瞳は『次はお前だ』とそう言っていた。
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