幼馴染み

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この世界には男女の性差の他に三種の性が有る。 α(アルファ)β(ベータ)Ω(オメガ)この三種の性、これがこの世界では重要で、αとΩにとって男女の性差はあまり関係ない。 生殖能力の低いαにとってΩは自分の子供を生んでもらえる唯一の存在、それは男女の性差は関係なく、αと番になる事でΩは子を孕む。 αにとってはΩが、Ωにとってはαが大事で、一般的に一番人数が多いとされるβは彼等にとってはゴミ屑に等しい。 人口比率的には世界のほとんどはβで構成されている。 αの数はβ100人に対して1人程度だ。更にΩは数が少なく、β1000人に対して1人しかいないと言われている。 けれどその常識はうちの村では通用しない、俺の暮らす村は人口は少ないが、このバース性の人口は人口割合が世間一般と逆転している。 それは外界とほとんど交流を持たずに生活してきた名残なのだろう、αとΩばかりが近親婚を繰り返し、その数を増やしていった俺の村はα30人に対してβ1人という一種稀な人数を叩き出している。 ついでに言うならβの数と一番希少種と言われるΩの数ですら逆転している。 俺の両親もαとΩだった。ついでに言うなら姉もΩだ、なのに俺はこの村で何故かβとして生を受けた。 村の外に出れば一番多い人口割合のβ、にも関わらずこの村ではどうにも俺達βは肩身が狭い。 何故なら彼らには特有のフェロモンという物がある。 うちの村ではそのフェロモンが常にあちこちで薫っている…らしいのだが、正直βである自分にはそれがどんな匂いなのかさっぱり分からない。 俺は小さい頃かくれんぼが得意だった。 何故なら俺にはフェロモンの匂いがしないから、誰も俺を見付けられない。 ついでにそのまま存在を忘れられ、置いていかれる事もままあるほどにβの俺の存在は希薄で、正直この村で暮らすのは限界かもしれないな…なんて思い始めている。 俺の名前はサクヤ。 何故か今、俺は年下の幼馴染の家の掃除をしている所だ。
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