幼馴染み

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「え~」とルークは不満そうな顔を見せるが、そんな不満顔を見せたいのはお前じゃなくて相手の番相手だと思うぞ。 番(つがい)それはαとΩが結ばれて一般的に結婚した事を指す。 結婚式をしました、証明書を出しました…なんてそんな上っ面の事ではなく、番うというのはバース性にとっては身体的な契りになる。 ただ1人の番相手を見付けたらαはそのΩの項を噛み、消えない痕を残す。 それをする事でフェロモンを発するαやΩのそのフェロモンは番相手にしかその効力を発揮しなくなるのだ。 この契りは簡単に解除できる物ではなく、番った相手が死んだ場合、もしくはα側からなら一方的に解除は出来るのだが、その場合のΩの苦痛は想像を絶するものがあり、死んでしまうΩがほとんどだと聞く。 なのでうちの村のΩは番う事を嫌う人間も多いのだが、それでも覚悟を持って番っているという事は、お互い一生何があっても添い遂げる覚悟があるという証明にもなっている。 それほど強い絆で結ばれた相手がいる人間に絶賛横恋慕中のルークは大層不満顔だが、そういうものだろ、と呆れてしまった。 あらかたのゴミを片付け一息吐くと、ルークはやはりにこにことこちらを笑って見ていた。 ルークはいつも笑っている。 彼は俺より三つ年下で、何故だか昔から俺の後を付いて回ってくる子供だった。 存在の希薄だった俺はαやΩの友人達に忘れられてしまう事もよくあったのに、何故か彼だけはいつも俺の後ろをぴったりくっついて来て、三つも年下だとどうしても幼い時分には面倒を見なければいけなくなる事も多かったのだが、なんだかそれが少し嬉しかったのだ。 そうやって面倒を見倒してきたら、いつの間にか俺はルークの世話係という称号を得てしまい、なんだかんだで今に到るのは若気の至りとでも言うしかない。 俺の後ろをちょこちょこ付いて回っていた小さな少年は、いつの間にか見上げる程に大きく成長して最近は上から見下ろされるようになってしまって少し不満だ。
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