幼馴染み

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「ねぇ、サクヤ。今日来てくれたって事は、何かご飯作ってくれるって事だよな?」 にこにことそんな事を言われるのはとても不本意なのだが、しっかり料理の準備を整えて来ている自分に否という言葉はない。 俺は家事が好きだ。 幼い頃に母を亡くし、母親代わりだった姉も俺がまだ幼いうちに結婚して家を出て行ってしまった。 男やもめの父と2人暮らしでは仕事に出ている父に代わり家事全般は俺の仕事で、それを苦に思った事もないのだが、当然やってくれるよね?というルークの態度はいただけない。 それでも俺がこうして彼の家を訪れてしまうのは、父が昨年再婚をして家を追い出されたからに他ならない。 まぁ、再婚自体はめでたい事だしどうでもいいのだが、1人で食べる食事の侘しさに耐え切れず、同じ時期に1人暮らしを始めたルークに差し入れなどを持ってこの家に通っていたら、いつの間にかルークの餌付けが完了してしまっていたのだ。 やっちまったなという後悔はすでに後の祭りで、彼は最近は俺が顔を出すたびに旨い飯が自動的に出てくるものと頭から決めてかかっている。 そして、自分ももう長年の習慣で彼を甘やかすだけ甘やかしているので、この状態は自業自得とも言える。 「おい、ルークこの台所は何なんだ、使った形跡まるでないぞ。ちゃんと飯喰ってんのか?」 「え~?そういえば最近家で飯喰ってないかも。面倒くさいんだもん」 ルークは生活能力に欠けている。 恐らく彼の親もそれに気が付いていて、彼にもっと自立をしろという意味を込めて家を追い出したのだと思うのだが、はっきりそれは上手くいっている気がしない。 それは自分が訪れるたびに荒れ放題に荒れている部屋を見れば一目瞭然だった。 「飯くらいちゃんと喰えよ。生活の基本だろ」 「だって1人で食べても美味くないんだもん。おいらやっぱり1人暮らしは向いてないと思うんだよね」
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