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甘ったれで陽気なルーク、確かに1人暮らしが向いているとは到底思えない。
「今日の献立なんだろな?」と楽しげに聞いてくるルークに「ビーフシチュー」と簡潔に答えて袖を捲くる。
それが彼の好物だという事を俺は知っているから。
「やったあ」と諸手を挙げて喜ぶルークに甘やかしすぎだとは思っている。
思っているのだが、ルークの嬉しそうな顔を見るのが俺は存外好きで、今日もこうして彼の世話を焼いてしまうのだ。
長年の習慣って恐ろしい。
「ねぇ、サクヤぁ」
「ん~?」
野菜を刻みながら生返事を返すとルークが珍しく真面目な顔でこちらを見ている。
「サクヤさぁ、おいらと一緒にここに住まない?」
「はぁ?何馬鹿言ってんだか。なんで俺がお前と同居なんてしなきゃならんのさ」
「だってさぁ、サクヤ料理上手だし、片付けしてくれるし、おいら1人じゃ寂しいんだもん」
「甘ったれんな。それにそれじゃあ俺になんのメリットもないだろ、俺はお前の母ちゃんじゃねぇよ」
「メリット…メリット…サクヤも寂しくなくなるじゃん?」
「俺は1人でも寂しくねぇもんよ」
言い切ると、ルークは少し眉に皺を寄せた。
「嘘だぁ、寂しくなかったらこんなに頻繁においらのとこ遊びになんて来てくれないだろ」
「別に寂しくて来てる訳じゃない。俺はお前が何時このゴミ溜めの中で行き倒れるか心配で見に来てるだけだ」
「なんだよ、それ」
ルークはむぅとむくれたような声を出す。
背ばっかりにょきにょき伸びて、今やルークと自分の身長差は頭1つ分にもなろうとしているのに、彼の中身は幼い頃のままだなと苦笑してしまう。
「馬鹿なこと言ってないで、少し手伝え。こっちの皿運んでいいから」
言って出来上がった皿を顎でしゃくれば彼は立ち上がり、その皿に手を伸ばした。
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