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「お前もさぁ、そんな馬鹿なこと考えてる暇があったら彼女の1人でも作ればいいだろ。この村じゃαのお前はよりどりみどりだ、俺には縁遠い話だけどな」
バース性の人間はやはり恋人にはバース性を選ぶ事が多い。
ただでさえ人口が少ないこの村ではβである自分は恋愛対象にすら入らない事が多くて、つい自嘲の笑みが零れる。
「オレ、彼女なんかいらない。それならサクヤがいい」
ルークの言葉に顔を上げると彼はいつもの笑みは浮かべておらず、少し緊張した面持ちでこちらを見ていた。
「何言いだしてんだか、俺だっていつまでもお前の面倒見てられるわけじゃないんだから、もっとしっかりしないと知らねぇぞ」
「サクヤは彼女とか、いるの?」
俺にそれを聞くのか…少なくともこの村で彼女を作るのは絶望的だと思っているんだがな。
「いたらお前の世話なんか焼いてねぇよ」
そもそもお前の世話に手がかかりすぎてそんな事考えた事もなかったわ。
俺はまたルークから視線を逸らして料理に目を向けた。
「じゃあさ…サクヤが恋人になってよ」
なんかまた変な事言い始めた…と俺は溜息を吐く。
ルークは昔から物事を深く考えない、いつも考えた事が口から何の吟味もされずにぽんぽん出てくるので怒られる事の多いルークなのだが、懲りるという事がない彼はやはり何度でも同じ事を繰り返す。
「ねぇ、サクヤ聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる。冗談も大概にしとかないとお前友達なくすぞ」
手元から目を離さずにそんな風に流していると、ふらりと彼が寄ってきた。
「…なんで皆何時も俺の言う事あたまから冗談だって決めてかかるのかな?オレはいつだって本気なのに」
「都合よすぎなんだよお前は、そんな言い方されて本気だなんて思えるわけないじゃん。自分の面倒見てくれる相手が欲しいだけなら余所あたってくれ」
「だからオレはサクヤが良いって言ってるだろ!」
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