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第二章
ブーザの長広舌は依然として止まる気配すらない。これで一人の人間を再洗脳出来ると思っているのなら、実に舐めた話だと思うが、人工生命体は所詮人の手を借りて作り出されたに過ぎないという事なのだろうか。それとも…。ともあれ、ミーの白け切った表情が、全てを物語っていた。
しかし、どんなに美辞麗句で飾り立てた物語も、ほんの一つの齟齬を切っ掛けに、脆くも瓦解する事がある。この場合、それは「日付」であった。
「ちょっと待て。」その時ミー、いや、スリグが発した言葉が孕んだ怒気と、氷のような冷たさを、俺はきっとこの先も一生、忘れることは無いだろう。
「今の日付が正しいなら、この船は僕がロンバダ星を離れる前に、もう地球に向けて発射されていた事になるぞ。」
ブーザは答えに窮して黙り込んだ。そこを容赦無くミーが畳み掛ける。「つまり、ロンバダ星は最初から地球を破壊するつもりだった。僕を地球に送り込んだのは、単に世論に向けて、新しい領土を侵略で獲得すると言うポーズを作るためだった…つまり僕は計画の最初の最初から、単なるパズルの一つのピースに過ぎなかったと、こう言う事なのか?」
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