第二章

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 レイブンの姿では言葉を発する事が出来ない。かと言って、ここで変身を解除すれば、シャトルデッキに居る俺の分身も消滅してしまう。だが、むしろ言葉など不要だ。俺はミーの手を固く握り、力づくで引きずり出そうとした。そして、なおも泣き喚きながら抵抗しようとする所を、最後は少々荒っぽい手ながら、防衛隊の護身術を使って気絶させる事さえ躊躇しなかった。  『やれやれ、手の焼ける奴だ。』俺は心の中で毒づいた。つべこべ文句を言わせるつもりなら、最初からこんな所に来たりするものか。俺にとってミーは気の合うアパートの同居人であり、かけがえのない友人だ。何があろうと、見捨てる事など出来る筈がない。  急いでデッキに戻ると、まさにシャトルは飛び立とうとする寸前だった。ハッチを開けて降りて来たメンバーに、ぐったりと意識を失っているミーを預けると、俺は再び操縦室に飛び去る…と見せかけて、再び身体をミクロ化して、他のメンバーに気付かれぬ様に、来た時と同様に俺の分身のポケットに忍び込んだ。  誰も知る由も無い事だが、船の制御は、今や完全に俺の掌中にある。既にコースの再設定と、地球から充分に離れた場所で自爆する様、再プログラム化は完了済みだ。俺に関する限り、事件は終わった。  さあ、家に帰ろう。たとえどんなに苦しく、辛い現実が待っていようと、死んでしまうよりは、生きている方が良いに決まっている。そうだろう?
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