第三章

1/3
前へ
/11ページ
次へ

第三章

 全てが終わり、何事も無かったかのように、また日常が戻って来た。  ミーことロンバダ星人スリグの地球への亡命はあっけなく承認された。と言うか、亡命を認めさせるための公聴会で高木班長が行ったスピーチ内容に、俺は心の底から呆れ返ってしまって、二の句が継げない有様だった。  地球に一人送り込まれた異星の工作員スリグ。だが彼の故郷であるロンバダ星は、最初から地球を侵略する意図など無く、超巨大惑星破壊兵器で地球の抹殺を企んでいた。ここまでは、まあ多少の誇張はあっても、基本的なストーリーにブレはない。  問題はここからだ。スリグはミサイルの接近を事前に知らされており、潜伏先の某アパートの一室から、昼と言わず夜と言わず、ひたすら救援の信号を送り続ける。「迎えはまだか…、迎えはまだか…。」だが母星からの返事は一向に帰って来ない。居ても立ってもいられなくなった彼は、地球もろとも吹き飛ばされるくらいなら、と悲壮な覚悟を固めてミサイルの阻止に立ち上がるが、そこで残酷な事実、自分が最初から見捨てられていたと言う事を悟ってしまう。  絶望に打ちひしがれたスリグが、自らの命と引き換えに、最後に取ろうとした策とは…。     
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加