てるてるさん

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 洗濯屋はびっくりするくらい上手くいったよ。  元々雨が多いうえ、川が近く湿気が強い土地柄なので、住民たちはカラッと乾いた洗濯物に強い憧れを抱いていたんだ。梅雨の時期に厚手の衣類や毛布が乾くとあって、オコノギさんの洗濯屋は常に満員御礼。大忙しになった。  接客と洗濯はサナエさんが主に担当した。洗濯を干して乾かし、取り入れるのがオコノギさんの役目で、時々は乾いた品々の配達にも行った。  日中、オコノギさんは広大な庭の真ん中に立って両腕を大きく広げる。すると雨の降らない面積がぐっと広がるんだ。こうやって広さをコントロール出来るのがちょっと便利なところだね。  日照量を調整したり、乾きかけの服の形を整えたり、洗濯屋の仕事は存外忙しい。オコノギさんだって、ただ腕を広げて突っ立ってるだけじゃない。  でも、人間何事も慣れてくると単調でつまらないと感じる。そして小さなことで悩んだりするものなんだな。
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