第1章 重なり合う夢

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第1章 重なり合う夢

君と出会った日は、特別な日ではなかった。でも、これからの僕にとっては、ここが人生のスタートラインといってもいいだろう。それくらい特別な日になるのだから。 学校が終わり、やっと放課後と思い、いつも通り図書館に向かっていた。 茹で上がるような暑い日、意地悪をするかのように僕に降り注ぐ強い日差し。今日はまるで僕をいじめるかのような天気だった。暑さで目眩がし始め、僕は少しイラついていた。自然と早歩きになり、図書館に着いた時には、家に着いた時と同じ、安心する気分になっていた。ここは市内でも結構大きな図書館だ。そこそこの数の本が揃っており、冷房もよくきいていた。だから平日といえど、多くの人が来ていた。僕は本が好きで、放課後ここにくるのは僕の日課だった。僕にはお気に入りの場所があり、読みたい本をすぐに持って行って読もうとしていた。 けど、お気に入りの特等席は埋まっていた。そこには制服を着た女の子が座っていて、必死に何かを書いていた。あまりにも真剣に書いていたので、僕は気になり、彼女の後ろを通ると同時に後ろから覗いてみた。 その瞬間だけ時が止まったような気がした。 彼女は小説を書いているようだった。 世の中に小説を書いている人なんてたくさんいるだろう。けど彼女が書いている小説は今までにないような小説な気がした。 あまり長く後ろに立っていると変な人だと思われそうだったので僕は一旦距離をとった。 息を殺すように、静かに彼女の座っている席の前に座った。 僕は高槻 翔(たかつき しょう)さんの作品を読み始めた。僕はこの人の作品が大好きで、僕が小説を書き始めた理由でもあった。 僕は元々は小説が嫌いで、小学生の頃は読書感想文のために本を読むくらいしか本を読まなかった。 そんな僕が漫画を買うために中2の時に本屋に行った時に高槻さんの作品に出会った。その本の紹介のところに、「この本であなたの世界が変わる」などと書いてあった。 最初は嘘だと思っていた。たかが本程度でバカバカしいと。そう思っていたら、そこの本の前で二人の女性が楽しげに話していた。 「この本まじで面白いんだよー」 髪の長い方の女性が言った。 「えー、でも私本とか読まないし」 あまり乗り気でないように、もう一人の女性が答えた。
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