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 ソファを立ってデニム地のジャケットを羽織った凪子は、不敵な笑みを美羽に向けた。 「人の物を盗ったらどうなるか。きっちり教えてやんなきゃ。行くわよ、美羽ちゃん」 「どこへ? 」 「取り敢えず、朱雀と十夜が向かった封印の場所へ」  はい、と頷いた美羽が爪先で自分の周囲にぐるりと円を描く。  光る円に凪子が入るのを見届けて、美羽が中心でぱん、と両手を打ち合わせると、二人の姿は掻き消えた。  雨足は少し強くなっていた。雨に打たれ、へたりと倒れた草の上に光が走り円を描き出す。その中に五芒星が形作られたと思うと、そこに凪子と美羽の姿が現れた。  さあ、と音を立てて降る雨の中、凪子は辺りを見回して眉を寄せる。 「思ったより相当傷んでるわね。良く今まだ保ったものだわ」  隣で「そうですね」と相槌を打った美羽が、視界の端に何かを捉え、そちらに顔を向けた。  草の陰に何かがある。  目を凝らしてそれを認め、大きく目を見開いた。 「―――― 十夜! 」  すっかり濡れた灰色の毛並みを撫で、あちこちを探ってみるが、目立った怪我はないようだった。けれど、内臓にダメージがあるかもしれない。掌を押し当ててみれば、温かさがじわりと伝わり、とくとくと心臓が打っているのも感じられた。     
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