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 にっこりと告げて再び作業を始め、ぽったりとした墨を磨り上げると、今度は筆を取り上げた。  いつも札を作るのに使うものより幾分厚みのある紙に、美羽が首を傾げる。 「その紙、いつものと違いますね」 「そう。特殊なコート紙なの。普通の紙より長くもつかな、と思って」  たっぷりと筆に墨を含ませる手元を見ながら目を瞬かせると、美羽はさらに問うた。 「鵜野を再度封印するんですか」 「斃せればそれがベストだけど。ま、保険ね。備えあれば憂いなし、ってやつよ」  答えながらも、凪子は真剣な眼差しで透平の符と見比べながら筆を滑らせる。空気が張り詰めるような緊張感に、美羽も黙って見守った。書き上げて筆を置いた凪子は、一つ大きく息を吐くと、出来上がった符を眺める。 「――― 元々の筆の差があるけど、効果は同じだから、ま、いいか」 「昔の人って達筆ですねぇ」  墨が乾くまで、と符を脇に避けたところで、十夜の動く気配がし、二人揃って顔を向ける。重ねたバスタオルに埋もれるようにして丸くなっていた十夜が、ぐっ、と身体を伸ばした後目を細める。 「目が覚めた? 痛いところはない? 」  すぐに傍に行った美羽が尋ねると、十夜はにゃあ、と一つ鳴いて肩の辺りの毛を舐めた。  特に不調はなさそうだ。     
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