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「――――― 朱雀がいないと十夜とも話せないわね」  唯一事情を知っているはずの猫も、言葉が介せないとなると結局ただの猫。  人肌に温めた猫用のミルクを用意する美羽を後目に、凪子はそっと息を吐いてポケットに入れたままだった宝玉を取り出した。  指で摘まんで明かりに翳してみる。 「物凄く高密度のエネルギーだわ。朱雀の炎と風……それと何だかよくわからないモノの……雷」  オレンジ色に淡く光る宝玉を矯めつ眇めつし、思いついたように美羽を呼ぶ。 「美羽ちゃん、ちょっとこれに力を乗せてくれない? 」 「私の? 」  首を傾げながら受け取った美羽は、手にした途端、意図を理解したらしく、すぐにそれを握り込んで目を閉じる。青白い小さな光が蛍のように美羽の周囲を飛び回り、宝玉を秘めた拳の中に吸い込まれてゆく。  目を開けた美羽は、少し眉を下げて掌を差し出した。 「これ以上は圧縮できませんでした」  オレンジから薄い緑に色を変えた宝玉は、ピンポン玉ほどの大きさになっている。エネルギーを圧縮するのはなかなかコツのいる作業だから、力の扱いに関しては割に大雑把な美羽が苦手な部類なのは凪子も分かっていた。  だが、本人は朱雀に負けた気がして悔しいのだろう。 「十分よ。ありがとう」     
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