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「――――― もう。十夜はお留守番してないと駄目じゃない」  小言を漏らす美羽に、猫は片方の耳を小さく動かしただけでそっぽを向いている。唇を尖らせる美羽を宥めるように凪子が声を掛けた。 「大陰」  呪を乗せた声音に、美羽の髪がふわりと揺れ、様相が変わる。振り返った薄青い双眸を見返して、凪子は微笑んだ。 「陰陽寮にお使い頼まれてくれる? 」  ふ、と大陰は目を瞠る。 「―――― 大通連(だいつうれん)を……鬼斬りの妖刀を使うんですか」 「使いたくはないけど、朱雀相手に丸腰は分が悪いわ」  思案するように視線を斜め下に投げた美羽だったが、分かりました、と口の中で呟いて、足元に方陣を描いた。大陰の姿が消えるのを見届けて、凪子は周囲を見回す。  ひんやりとした空気が満たす礼拝堂。  見下ろしてくるキリスト像は顔に落ちる陰影のせいか寂しげな表情に見えた。 「別に信者じゃないけど、さすがに壊すのは気が引けるし、野次馬が集まると面倒だから」     
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