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盾の向こうで言った凪子に、鯰は構わず再度口を開ける。
さっきのものより幾分小さな光球が、マシンガンのように繰り出され、さらにそれが無軌道に飛んで凪子を狙った。
「――――― っと、そんな芸当もできるのね。なかなか頭を使うじゃない」
盾に手を翳し、そのまま横に滑らせると、盾も一緒に移動する。光球のことごとくをそれで弾いた凪子に、鯰は癇癪を起こしたように声を上げた。
身体に似合わぬ金属的な高い咆哮が堂内を満たす。空気を振動させ生まれた衝撃波が、壁で増幅されて四方から凪子を襲った。
取りだした札で自分の周囲をぐるりと囲み、素早く印を結んだ後、ぱん、と両手を打ち鳴らすと、まさに凪子を呑みこもうとしていた衝撃波が霧散する。
「――――――― 終わり? 」
にやりと皮肉げな笑みを乗せ、首を傾げて問うと、鯰はぞろりと不揃いな牙を剥いて飛びかかってきた。口の中で呪を唱えながら突っこんできた頭を跳び越え、反対側へ着地すると同時に右腕を薙ぐ。周囲に展開したままだった札が、その腕の動きに倣うように空を滑り、風を切って鯰の身体へと貼り付いて行く。
薙いだ手で刀印を結び、顔の前に立てて告げた。
「急々如律令」
途端、札に書きつけられた文字が明滅し、一斉に爆発する。
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