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 ふ、と鵜野が目を瞠る。その表情の変化を見据えながら、五芒星から迫り出してくる柄を握り、ゆっくりと引きだした。  鏡のように磨きこまれた美しい刀身。  かつて、鬼姫と呼ばれた鈴鹿御前(すずかごぜん)が所有していたとされる、鬼斬りの妖刀、大通連。  携帯をデニムのポケットに押し込み、大通連を一振りする。  白く光を返す刀身を見ても表情を動かすことなく静かに佇む朱雀を見つめ、ぐっ、と奥歯を噛みしめた。    ――――― 存在してはいけない異質なモノは、あっちの方じゃないの。  ――――― なんだか、今の言い方は俺が肯定されてるように聴こえたから。 「楽しませてくれよ、現代の術師」  にやにやと笑う鵜野を鋭く見やり、大通連の切っ先を向ける。ちゃき、と(つば)が鳴いた。 「朱雀は返してもらうわ。あんたのことは ―――――― ぶっ殺す」  不穏な一言を吐き捨てて、凪子は朱雀に向き直る。 「帰るわよ、朱雀」  それまで伏せられていた目が、ふと初めて気づいたように向けられた。  赤い瞳には何の感慨も見受けられない。 「お相手してやれ」  投げかけられた鵜野の声に、一つ瞬きをした朱雀の姿が不意にぶれた。ざわりと背中が粟立って、反射的に刃を(かざ)す。ぎん、と鈍い音と共に刃に衝撃を喰らい、咄嗟にもう片方の腕で刀身を支えた。     
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