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「全力で行きます。前衛は任せてください。援護お願いします」
言い終わるより早く、大陰は矢のように駆け出した。
身軽な大陰は攻撃に重さが無い。スピードで手数勝負。凪子は出した札の束を片手の指先で扇状に開いて放った。
大陰の前に円形になるように展開した十枚の札は、大陰の動きを妨げることなく宙を浮遊する。気合の呼気と共に冷気を纏わせた拳を連続で繰り出す大陰に、朱雀は眉一つ動かさず最低限の動きで全て躱す。凪子はタイミングを図って札の一枚をつい、と移動させた。大陰が爪先を浮かせるのに合わせ、その一枚を朱雀の眼前で爆発させる。同時に大陰の蹴りが朱雀の身体を後方へと弾き飛ばした。
腕を上げて爆発を防いだために、がら空きとなった鳩尾にまともに入ったらしい。
その衝撃を物語るように、叩きつけられた壁がべこりとクレーター状にへこみ、無数の亀裂が走る。ずるりと壁を伝って床に足をつけた朱雀は、それでも膝をつくことはせず、壁に腕を預けて身体を支えた。
上げたままだった足を下ろした大陰は、顎を引く。
「結構、渾身の一撃だったんですけど」
ぽつ、と不機嫌に呟くと、足を前後に開き、深く腰を落として構えた。ぐっ、と後ろに体重を掛け、全身のバネを使って踏み出す。
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