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 鵜野は相変わらず十字架の端に腰を落ち着けて見返す。 「生憎だけど、千年も昔の怨みを未だに引き摺ってるような、粘着質の男に付き合うほど暇じゃないのよ。とっとと消えてくれない? 」  凪子の言い様に、片目を眇めて口の端だけで笑った鵜野は、その場から動かずゆったりと脚を組んだ。 「折角封印から解かれたのだ。はいそうですか、と引き下がるわけが無かろう。千年分とはいかぬまでも、せめて封印された怨みくらいは晴らさねば、術師の名折れだ」 「だったら、正々堂々とそこから降りて戦いなさいよ」  苛立ったように告げれば、鵜野は肩を揺らして笑う。 「降りるまでもない」  言うと同時に複雑に折り畳んだ黒い紙を放った。 「叩き潰せ」  低い声に、風を切った紙はむくむくと膨らんだと思うと、三つの目を持つ大きな鴉へと姿を変える。  黒い翼をはばたかせて滞空する鴉を見据えて、凪子は刀を腰だめに構えた。  ばさりと音を立てて一際強く打ち振られた翼から、無数の羽根が飛んでくる。  刃のように空を裂いて向かって来るそれに、朱雀と大陰が一歩前に出た。  凪子の盾となるように立ちはだかった二人は、無言のまま背中合わせに立ち、示し合わせたように飛来する羽根に向けて片手を翳す。     
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