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刹那、その掌の先に水と炎が渦を巻いた。相反するはずの二つの力が混ざり合い、半円のドームのような形の被膜となる。
三人を切り裂こうとした羽根の刃は、金属音のような甲高い音を響かせてそのことごとくが砕け散った。
きらきらと光を撒いて降る欠片を更に散らして、凪子が鴉へ向けて踏み込む。
鋭く息を吐いて鴉の首元を狙い、大通連を振り抜いた。つもりだった。
刃は鴉の首に埋もれる事すらなく、身体を覆う羽毛によって止められている。
「どんだけ剛毛よ」
毒づいて退こうとする凪子を追うように、鴉が頭を突き出す。
はっとして刃で受け止めようとしたのと、両脇から影が飛び出したのが同時。
鴉の嘴を朱雀が捕え、宙に舞った大陰の踵が鴉の眉間に叩きこまれた。
潰れた悲鳴を上げて床に崩れた鴉は、けれどすぐに頭を振って起き上がる。たたらを踏むように足踏みした後、ぱくりと口を開いた。
その口から耳をつんざくような甲高い鳴き声が発される。
顔を顰めて耳を塞いだ凪子と大陰の脇で、頭を抱えるようにして朱雀が膝からくずおれた。
「朱雀! 」
床に額をつけるようにして頭を押さえて呻く朱雀に大陰が駆け寄り、凪子は鵜野を鋭く見やる。その視線を受けて、鵜野は目を眇めて笑った。
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