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『鵜野に弾き飛ばされた衝撃で、我もやっと思い出した。……久しいな』  つい、と向けられる涼やかな双眸に、朱雀は思い出したように息を吸い込み、もう一度「陸王」と呼ぶ。かつ、と蹄を鳴らした陸王が一つ首を振ると、人の姿へ変じた。 『そうだ。我の名は陸王。“十夜”は……お前の名だ』 「ごめん、話は後にしてくれる? 」  凪子の声に陸王がちらりと目をやる。  大鴉は両翼と嘴を封じられてなお、反撃に出ようとしていた。  身体を覆う黒い羽根がざわざわと逆立ち、今にも放たれようとしている。  凪子は素早くいくつかの印を結びながら、口の中で猛スピードで呪を唱えた。大陰が呼び寄せた水が、ひたひたと足元を濡らし始める。 『命じろ、朱雀。あの日、透平の弟子となった時から、お前もまた我が主』  朱雀は陸王を見返し、凪子と大陰の動向を見やってから口を開いた。 「弓に」  ただ一言のそれに、陸王は一つ頷いてその身を弓へと変え、朱雀の手に納まる。  握りを確かめ、先程放った角を拾い上げた。  血に塗れたそれを、ぐっ、と握り締めると光を放ち一本の矢へと変わる。     
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