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「さて、相手が外道なら正々堂々なんて必要ないわね。総動員で完膚なきまでに叩きのめしてあげるから、覚悟なさい」
いつのまにか床はひたひたと水が満ち始めていた。大陰が小さく口の端を上げる。目だけで凪子たちを見回した鵜野は、鼻で笑って顎を逸らした。
「良かろう。我に勝てると思うなら、掛ってくるが良い」
「その余裕がいつまで続かしら……ねっ! 」
一瞬沈み込んだ凪子が、踏み込みながら大通連を横様に薙ぎ払う。後ろに跳んだ鵜野の背後に、するりと朱雀が滑り込み、回し蹴りを繰り出した。上体を倒し、床に片手をつくと、びき、と音を立てて凍りつく。額めがけて振り下ろされた大通連の切っ先を、空いた手の指二本で受け止めた。
「こんなものか」
「ウォーミングアップよ」
片方の口の端を引き上げて言った鵜野を見下ろして、凪子も真似るように口の端を片方だけ持ち上げる。
刃を引くと同時にくるりとターンして距離を開けた凪子は、腰を落として目の高さに大通連を構えた。
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