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 外の朝靄が晴れぬうちに現われた師は、疲労の色濃い面に険しい表情を乗せていた。  気配に目を覚ました朱雀は、師の様子に驚いて身体を起こそうとしたが、老人の枯れ枝のような手がそれを制する。 「――― 今、呪いの源を突き止めた。摂政の薬師を狙ったのは、鵜野蘇芳という呪い師だ。居所は分かっておる。今から陰陽寮の術師二人と共に討ちに行く」  今度こそ、朱雀は飛び起きた。 「今から? 少し休まれた方が……そんなにお顔の色が悪いのに……」 「急がねば、姿を晦ましてしまうやもしれん」 「だったら、俺も行きます」  老人の目が鋭く見返し、朱雀はふと息を詰めた。 「ならぬ。お前に施した術はまだ安定しておらん」 「足手纏いにはならないようにします。だから……! 」  置イテイカナイデ。  言葉にせず呑み込んだそれは、頑是無い子供のようで。我儘でしかないその一言を言うのは流石に憚られ、朱雀は縋るように師の袖を掴んだまま唇を噛んで俯く。  けれど、老人はそれを正しく読み取って、その目許を和らげた。 「―――― すまぬな。わしにはお前を拾った責任があった。必ず帰ってくる。それは約束する。お前を一人にはせぬよ」     
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