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『お昼頃、教会から光の柱が立ったとかで、野次馬が集まってるんです』
「光の柱? 」
『はい。数秒間だったようですけど、結構見てた人がいたみたいで、教会の周りに凄い人だかりです』
「そう……。忍びこめそうにない? 」
『無理そうですね。周辺の人だけじゃなさそうですし』
やや呆れたような口調から、肩を竦める美羽が脳裏に浮かんで、苦笑を漏らしながら問う。
「気配はどう? 」
『私が感知系苦手なの知ってますよね、凪子サン』
恨めしげに言われて、凪子は苦笑を深めて言った。
「ごめんごめん。分かる範囲でいいから」
しばらくの間を置いて、溜息交じりに答えが返ってくる。
『……取り敢えず、今はいないみたいですね』
「鵜野も? 」
少し考えるような間があってから、返事があった。
『いなさそうです。残滓のようなものはあるみたいですけど』
美羽の答えに、凪子はそっと溜息を漏らして頷いた。
「そう。そのままそこにいても収穫はなさそうね。日を改めましょう。一旦戻って」
『はい』
通話を切って、凪子は窓の外に目をやった。
「――――― 一雨、来そうね」
いつの間にか、鈍色の雲が空を覆い始めていた。
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