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 鯰の気に障る声音に、不機嫌に呟いた朱雀は、翳した掌をぐっと握り込む。炎を纏った風の渦が回転を速め、すっかり光球を包み込んでしまうと、今度は見る間に小さくなってゆく。  オレンジ色に輝きながら、ビー玉程度の大きさになったところで、すとん、と朱雀の手の中に落ちた。  それを一瞥して、握り込んだ手をジャケットのポケットに突っ込んだところで、十夜が呼ぶ。 『―――― 朱雀』  やや緊張を孕んだ声に、朱雀は肩越しに目を向けた。  木々の陰に紛れるように男がひっそりと立っている。  多賀城。  否。  その気配はすっかり塗り替えられ、どす黒く異質なものになっている。何より、その目。黒く染まった眼球のせいで、眼窩に瞳が浮いているように見え、不気味さを増していた。 「鵜野蘇芳か」  朱雀の低い問いに、男は片眉を上げ、口の端だけで笑った。 「やっと思い出したか、それとも、調べたか」  肩を竦めて、朱雀は軽い口調で答える。 「調べてからやっと分かった。思い出すも何も、あんたとは対峙したことが無いんだから、記憶にあるはずが無かった」  鵜野は目を眇めた後、鼻で笑った。 「成程。確かに直接面識はなかった。……だが、お前の中には我の呪が刻まれているはずだ」  朱雀の目が険を増し、片足をずらして半身を鵜野に向ける。 「―――― そういえば、その借りを返してなかったな」     
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