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肉体的には何も変わってはいないのに、薬をやった者は自分が強くなったと思い込む。だが思い込みの力は予想以上の力を発揮させた。思い込みがその人のもとからある力を最大限まで引き出させたのだ。薬の使用は男性が多く、女性がこの薬を使うと堪えられず狂い死にすると言われている。
そして勘違いした者達は自分の力に酔い、その力を試すように、弱きもの《おんな》を引き裂き、物や金を奪い続けた。
当初、政府はこれを注視してはいなかった。以前から出回っている麻薬と変わらない物だと判断していたのだ。だが、「フェリチタ」は麻薬売人と、発達したネットワークにより国内全土に広がり、薬を手に入れた者達が一斉に狂い始めた。
国家が用意した治安部隊と狂った者達の攻防が続く中、どこからか大量の銃器や刃物等の武器も街に流通し始め、もう誰にも漏れ出す力を止めることは出来なくなっていた。
人間達は力に魅了され、狂った獣のように自らの手で自らが造り上げてきた文明を壊し始めた。
荒れ果てた世界でやがて女は姿を隠し、狂った男だけが取り残された。男は新たな生命を宿せない、減りはしても増えることはない。連れてきた女もすぐにまた姿を消してしまい、絶滅の危機を迎えた世界は、破滅への道を歩み始めた。
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