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「ウタウタイさん、その続きは、どうなっちゃったの?」
「さて、どうだったかな」
少年は頬を膨らませ、拗ねながら俺に抱きつきせがむ。俺はふと澄み渡る青い空を見上げた。暖かくて、眩しい。
風が花の甘い香りを運び、心地良い。
視線を下ろし、丘から見える寂れた街並みを見る。これが過ちの代償だと言うのならば。酷な話だ。 俺は己の名すら遠い昔のあの日に忘れ去った。俺はただ、悪戯に生き残ってしまったのだ。
全てを失った俺には何もなく、抜け殻のようだっただろう。
だがそんな俺にも残っているものがあった、それは全てを失った日に聴いた優しい「歌」それだけだった。
本を閉じる。これは誰かの物語ではない。
「お話の続きを謳おう」
少年は、目を輝かせ大きく頷いた。
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