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逃げ場の無い俺達家族に揃いも揃って「あなた達も早く逃げなさい」と言い嘲笑っていたが、母さんの祖父母は死に、母さんには兄弟が居ないので親戚は居ないに等しい。父の家族とは仲良くなくて、頼るあては何処にもない上に母さんは父の思い出が詰まったこの家からどうしても離れる事が出来なかった。
俺達には何処にも行く宛が無かったのだ。
朽ちていく街に留まった俺達の生活は厳しいものとなっていく。
「今夜もこれだけ?」
夕飯として出されたのは、野菜の切れ端。それを見て俺は思わず呟いてしまった。そんな言葉に母さんは申し訳無さそうに、目を伏せる。だから俺はその日からお腹が減ってもなるべく口にしないようにした。
何故食べ物が無いのか、それも母さんに聞いてみた事がある。すると母さんはちょっと難しい言葉でこう教えてくれた。
「国を立て直そうと、偉い人達がね、何度も色んな政策を行ったせいで、生活は余計悪くなっちゃったのよ。だからご飯、いつも用意できなくてごめんね」
俺達はろくに食事も出来ず、いつ終わるのかわからないこの悲惨な状況に毎日怯えながら過ごしていた。そんな時、大きな地震が起きてたくさんの建物が倒壊した。俺達の家は奇跡的に倒壊は逃れたが、家具は使い物にならなくなってしまった。その日からまだ微かについてた電気がついに途絶えてしまい、街は夜になると真っ暗になってしまう。それが凄く怖く感じた。
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