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肉体的にも精神的にも誰もが追い詰められていた。こんな日々を続けていたら正常でいる方が難しいとさえ思える。
そんなある日、食事として四角く少し厚めのクッキーのような物が出てきた。
あんまり美味しくは無かったが、野菜の切れ端よりは良い。だが何故急にこんな物が手に入ったのだろうか。
「母さん? 髪どうしたの」
「ごめんね」
母さんの長く綺麗だった黒髪が短く切られていた事に関係があるのかと、俺は首を傾げる。不思議に思い理由を聞いても母さんは曖昧に笑うだけで答えてはくれない。
母は髪を切った頃から、日に日に目に見えて痩せこけていった。
俺は、薄々気付いていた。母が知らない男にその身を売り俺の為に食糧を集めていてくれていたという事に。
だが、それは俺が寝てるときに行われてるみたいで、俺にはどうにも出来なかった。
夜中、声を押し殺し泣いている母さんに、俺はただ寄り添う事しか出来なかい。
ふと、母さんが何かを祈るように握りしめている事に気づく、それは父の写真だ。強く握り締められたせいで写真は皺になっている。 写真の中で笑う父の笑顔が酷く歪んで見えた。
それから暫くして、俺が起きている時に、男がやってきた。
「よう、お前の母さんはどこだ」
「アンタは誰だ?」
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