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桃泥棒――それは、近頃、桃農家を苦しませている桃だけを狙った泥棒だ。
たわわに実る桃を知らないうちに盗り、何処かに転売しているらしい。
桃王国岡山では、駅前の広場に植えている収穫直前の桃を全て盗られたという。
なんとも、腹立たしいことだ。
私の死因も、その桃泥棒と深く関わりがある。
死因だなんて、物騒この上ない話だが、本当のことだから仕方がない。
その桃泥棒を私は、死んで霊体になった透け透けの体で必死に探した。
探して、探して、マジで地獄の果てまで探すつもりで、探した。
ゴミ箱の中やら、猫の住処になっている路地の隙間。
町中、隅々まで見渡した。
そして、とうとう見つけ出した。
詳細は省かせて貰うが、その犯人の顔を私は、バッチリ見ていた。
思い出しても腸が煮えくり返って、桃が飛び出そうになる。
犯人は、二人組のオッサン。
黒の上下セットのおそろいジャージ。
そして、なんと言っても桃の匂い。
これが、靴とズボンの裾についているはずだった。
霊体というのは、意外と便利なところもあってその体を活かして(死んでるけど)居場所を突き止めた。
そして、突き飛ばした。
霊体は、疲れないし、電車、タクシー、使い放題。
なんなら、トラックの上に乗って辺りを見渡す荒業も使える。
人の噂も聞き放題で、青果市場なんかで情報収集するのも楽に行えた。
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