偽りのΩ

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 声はシーツに吸い込まれ、外に漏れることはなかったが、代わりに手首から伸びる鎖がぎしぎしと軋む音をたてた。 「――碧」 「…っ、ん…ッ、っ…、ぐ…!」  激しく揺さぶられ、顔面がシーツに擦れる。……しかし、それすら「快感」と皮膚は認識し、どこまでもどこまでも幾重にも折り重なり、躰の奥底に沈殿してゆく。 「碧…あおい…!」 「あっ、ああっ、はっ…ア…ッ!」 「あおい…、くッ…ハ…!」  後ろで、薫が小さく喘ぐ声が聞こえた。  その声に終わりの近さと、ぞくりとした欲情を覚える。 「か…ぉる…!」 「ッ…ク…」  それは、イクという呟きだったのか、あるいは単なる呼吸の乱れだったのか、わからなかった。  わかったのは……奥の奥に注ぎ込まれた精液の熱さ。 「ァ…アア…ア…ァ…」  自分の中が、命の種子を一滴も取りこぼさぬようきゅうぅと熱杭を(しぼ)るのがわかった。  放たれた拍子に俺もまた精を放ち、シーツを汚す。  最後まで注ぎ込んだ後、役目を果たした男性器がずるりと後孔から抜け出していった。それを惜しむかのように内壁が追いすがる。  欲に溺れた躰はまだ物足りないと()いたが、心は終わったことに安堵していた。     
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