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だからといって、甘やかされて育ったわけではない。
むしろ兄姉は俺のすぐ上の兄である三男には甘かったが、俺に対しては厳しめだった。
「だっておまえ可愛げがないし」
「愛想もないし」
「可愛くないし」
「可愛げもない」
「……三回も繰り返さなくても俺に可愛げが欠けているのはわかってる」
「そういうところが可愛くないんだよ、おまえは」
そう言って、三男を猫かわいがりする次男の岬は、俺に一番厳しい…というか扱いが雑だった。たぶん、三男の望以外はどうでもいいのだろう。
「それにしても、望がΩだっていうならわからんでもないが、まさかおまえがなぁ…」
それはたぶん家族全員の一致した認識であり率直な偽らざる本音だろう。だからこそ誰の顔にも困惑が色濃く浮かんでいた。
――そう、「まさか」なのである。
俺の身体的特徴や全体的資質は、まさに典型的なαの特質を有していた。
ゆえに家族の中で誰一人として、自分も含め、俺がα以外であるなどと疑いもしなかった。
三つ年上の兄である望の方がむしろΩではないかとずっと案じられていたくらいだ。
望は中性的な美貌と、音楽方面に秀でた才を持っていて、物腰も柔らかくαの特性からは少し印象が外れる。
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