偽りのΩ

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 ――兄よりも俺の方が、一般認識されているα像にずっと近い。  俺は背も高く、骨格もしっかりしていて、顔つきも男らしい部類だ。……俺の姿形はどこからどう見てもαである。華奢な体つきで、精神的にもどこか脆弱な性質の者が多いΩの特性からは大幅にずれている。たとえ自分がΩだと主張しても、いったいどれほどの人間がそれを信じるだろうか。――と疑心暗鬼になるレベルで俺は一般的なΩ像から逸脱していた。  だからというわけではないが――。  俺は家族に自分がΩであることを秘密にしてくれるよう頼んだ。  家族はあまりいい顔をしなかったが、なんとか説得し、高校卒業までを期限に自分の「性」をαで押し通すことにした。  家族以外には誰にも明かせぬ秘密を、中二の夏、俺は持つことになった。  果たさねばならない約束があった。  それは、αでなければ果たせない約束だった。  兄から可愛げがないと太鼓判を押されるくらい愛想のない俺にも、一人だけ特別に親しく交流している友がいる。  ――殿塚(とのづか)(かおる)。  親友でライバルで、同志。  幼馴染に近い間柄で、同じ中高一貫校に通う同級生でもある。  俺たちが中学一年だった頃、季節外れの転校生により学園が荒れに荒れた。     
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