1679人が本棚に入れています
本棚に追加
――兄よりも俺の方が、一般認識されているα像にずっと近い。
俺は背も高く、骨格もしっかりしていて、顔つきも男らしい部類だ。……俺の姿形はどこからどう見てもαである。華奢な体つきで、精神的にもどこか脆弱な性質の者が多いΩの特性からは大幅にずれている。たとえ自分がΩだと主張しても、いったいどれほどの人間がそれを信じるだろうか。――と疑心暗鬼になるレベルで俺は一般的なΩ像から逸脱していた。
だからというわけではないが――。
俺は家族に自分がΩであることを秘密にしてくれるよう頼んだ。
家族はあまりいい顔をしなかったが、なんとか説得し、高校卒業までを期限に自分の「性」をαで押し通すことにした。
家族以外には誰にも明かせぬ秘密を、中二の夏、俺は持つことになった。
果たさねばならない約束があった。
それは、αでなければ果たせない約束だった。
兄から可愛げがないと太鼓判を押されるくらい愛想のない俺にも、一人だけ特別に親しく交流している友がいる。
――殿塚薫。
親友でライバルで、同志。
幼馴染に近い間柄で、同じ中高一貫校に通う同級生でもある。
俺たちが中学一年だった頃、季節外れの転校生により学園が荒れに荒れた。
最初のコメントを投稿しよう!