偽りのΩ

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 高等部の生徒会は崩壊、その煽りを受けて風紀委員会は機能不全に陥った。元々両組織の仲は悪く、無意味に張り合っているがために連携もとれておらず、一旦バランスを失えば、そこから学園の秩序が崩壊するのは早かった。  当時、高等部一年生だった俺の兄の望はその騒動に巻き込まれ、――あわや集団暴行の標的にされかけた。望はなぜかΩであると噂され、それを真に受けた馬鹿な連中に誤解されて、あろうことか――輪姦(まわ)されそうになったのだ。  俺と薫がいち早く情報をキャッチし、間に合ったからなんとか阻止できたが、あの時は本当にぎりぎりで、今でも思い出すとぞっと肝が冷える。  俺と薫は親友でライバルで同志。  身長も同じくらい。  体格も同様。  成績もトップを二人で争い、部活は違っても残す実績でやはり肩を並べて競った。  バレンタインのチョコの数では負けたが、中学卒業時にもらった花の数は俺の方が(まさ)った。  下の毛が生えたのは俺のが一足早かったが、精通は先を越された。  くだらないことから、他人に誇れるものまで、俺たちは何に対しても張り合ってきた。  お互いを認め合い、高め合い、切磋琢磨し、――共に歩む。  ずっと、そうやって、生きていけるのだと、そう思っていた。  二人の歩む道が別たれるなど、想像したこともなかった。 「俺らが高校いったら、絶対にこんなこと、許さねぇよ」 「…ああ」     
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