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怒っていないのに怒っている…なんて怖れられることもしばしばで、ときにへこんでいる姿を見かける。
だけど――、
「俺は、桜は散りぎわが一番好きだ。まるでピンクの花びらで世界を祝福しているように見えないか? つい時間を忘れ、見惚れてしまう」
なんて真面目くさった顔で風流なことを自然と口にのぼらせる牧歌的な人間だ。……和むし癒される。
「俺は桜なら桜餅が好きだな」
「花より団子か」
凛とした他を寄せ付けない端正な男らしい顔が、ほんのりとこちらにむかって笑み崩れるのを見るのが、好きだ。
――αだと思っていた親友が自分の大嫌いなΩだった。
岬と密約を交わしたものの、正直、戸惑いは大きかった。
自分は、今までと変わらぬ態度を碧に取ることができるのだろうか…。
そんな不安を感じないわけではなかった。
そして、それは実際、会ってみないことにはわからなかった。
話を聞いても不思議と碧に対して忌避感が沸き起こることはなかったが、顔を見て会話して――Ωだと実感したときに、自分の感情がどう動くのか、自分でも想像がつかなかった。万が一、嫌悪感を抱いてしまったら…? 今でもΩを忌み嫌っているのだ。むしろ、嫌悪を覚えない方がおかしいとすら思えた。
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